「正座」にはずいぶん苦労しています。これを苛めや嫌がらせに使っていることもあります。最近消防署の新人訓練に正座を体罰として常時取り入れられ苦痛で辞めた人たちが裁判に訴えている話がありました。私もある訓練場で、激昂した訓育指導員に椅子席から降ろされ板の間に座らされ、両手まで上げさせられて指示違反の犯人探しをされた経験があります。教育・指導に名を借りた集団生活での人権を無視した『正座体罰』です。
丁宋鉄著「正座と日本人」(講談社)という本を面白く読みました。その歴史は、江戸時代(8代将軍吉宗)の武士階級からはじまり、明治時代には日本の庶民文化を表す仕草として普及してきたようです。かといって上流階級対象だけでなく芸者や遊女をはじめ下層階級にも取り入れられ、茶道や着物を着る文化そして畳文化などとも関連して普及してきています。
もちろんしびれなどのマイナス部分だけでなく集中力を養い眠気を覚ます効果もあります。
この著者は、古くからの日本人の生活や文化を今に残されたものから考察している医者の立場と歴史家の立場から見ています。「僧侶も神主も正座をしていなかった」(168頁)には疑問を納得させてくれます。楽座(アグラ)が江戸時代まであったようです。そして足腰が弱くなってきているこれからの日本人文化を憂いそしてもう一度「正座から」のことを考えて欲しいと指摘しています。是非一読を勧めます。